ドクターマーチンの靴ほど、履き心地が良く、長持ちする靴はない。もう少し早くくたびれてくれれば、新しいものを買えるのにと思うくらい頑丈である。柔らかい女らしい靴がお好きな方は「なんて、みっともない靴」と感じられるかも知れない。だが、DMs の靴、メリージェーンやブーツはペザント風のワンピースにも、カシミアのツインセットに真珠のピアスやネックレスの組み合わせにも合う(と私は思って、そのスタイルで出歩いている)
DMsは、時代によって色々なストーリーがある。発端は、1945年、ドイツ軍属の医者であるKlaus Martensがスキー休暇中、くるぶしをを傷めたことに始まる。履いていた軍隊の靴の履き心地が悪いので、柔らかい皮、クッションの効いたエアーソールで楽に履ける靴をデザイン。なかなか商売にはならなかったか、47年に友人と組んでビジネスに成功。Dr. Martens が世に登場した。
初期は、履き心地の良さが人気で、購買者の80%以上が40過ぎの主婦だったそうである。その後、郵便配達人、警察官、労働者に浸透し、60年代後半には、スキンヘッドがDMsのブーツを履き出し、70年代には、パンクロッカー、活動家など若者のサブカルチャーの担い手に好まれた。90年代のグランジファッションでさらに人気が上がり、コベントガーデンにビルを構えるまでになった。初期のレースの穴が8つの1460型ブーツは今でも看板商品である。と、主流は1460で、私も幾つか持っているが、ここではブーツではなく、私が気に入っているぺたんこ靴をご紹介する。どれもオンラインショッピングで買ったものである。黒系は除いて、今まで、他の方が同じものを履いておられるのは一度も見たことがない、言ってみれば「変わりもの」を選んでみた。
上の二足はかなり前から持っていて、ウイングチップのシルバーは白 一色や、麻のブレザーなどにもよく合って便利である。赤のチェックは、グレーやチャコールのクラシック(と言っても、六本木の「布」製なので、面白い質感のある生地) なシルエットのすとんとしたセットアップと一緒に履く。首に赤系統のスカーフも。とにかくチェックの色と柄に魅かれて「即買い」したものである。
キラキラとラメが光るオックスフォードは、オンラインで、キラキラをツイードの生地と見間違えて買ったもの。箱を開けてびっくりした。「これ、派手すぎるかしら?」と夫に見せると「クール!」のひとこと。送り返すのは止めて、コンサート、ディナーなど、場所を選んで履いている。パテントの方は、DMs にしては、珍しいデザインだが、夏場、スカートにも合って履きやすい。甲の部分に黒のレースが見える、パンプスの中に履くショートソックスと合わせると、レースが靴の一部に見えるらしく、良く「素敵な靴」と言われた。それ以来、いつもそのレーススタイルで。
黒白コンビは、ウイングチップのものが出るのを待っていたので、見つけた時は大感激。Aラインの黒のレザースカート、ラッキーブランドの柔らかいレザーの細身、短めの黒ジャンパー、首には黒とグレーの水玉スカーフ、脚は黒のタイツ、その上に黒と白の小紋柄のソックスを重ね、黒白ウイングチップを履いて、(そうそう頭には黒のウールベレーを被って) 、防寒対策万全な姿で、とある寒い地方の美術館の中をのしのし歩いていたら、ごく若い女性の監視員の方に「そのコーデ素敵ですね」と褒められた。きっと、黒が好きな方だったのだろう。
黒白のゼブラ模様の方は、去年、なんとなく暇つぶしにDMs のサイトを眺めていて見つけたもの。まだ、履いてなくて、2月の東京訪問でデビューの予定。真っ赤なカシミアのヴィンテージ (要するに大昔の) コートを着て行く予定なので、それに合わせて。
靴でなくブーティだが、花柄は、キャンバス地でとても軽い。ブルージーンズに良く映える。これはDMs特有のソールではないので、履き心地はやや劣るかも。茶色のメリージェーンは中のチェック柄の色合いがシックである。30年くらい前に初めてお目見えしたらしく、レビューの欄に、女性の医師の方が「昔、若くてレジデントをしていた頃、これを履いて長時間の勤務を乗り切った。履き心地が抜群で履き潰した後、同じものを買おうとしたら、製造中止になっていて、本当にがっかりした。久しぶりにサイトを見たら、懐かしい大好きな靴が復活していた! もう、若くないけど、すぐ買いました!!」と書いていて、私も、すぐ買いました!!
私は、ある程度きちんとした格好にDMsを合わせる。流行に左右されないドックマーチンは都会歩きに打って付け、と思っている。