電車内での痴漢被害などから、女性専用車両を導入している鉄道会社が多いそうである。私は大変結構なことと思ったが、「(女性)専用車両を『男性差別』と訴え廃止を求める動きも根強く」(毎日新聞の記事より引用)あると言う。また、テレビでも「女性専用車両に乗りたくない女性を取り上げる特集が相次いで放映された」(同記事より引用)。
まず、差別の問題。私は小学生の頃、地下鉄丸の内線の池袋発が最後の車両を子ども優先にしたことを憶えている。少なくとも、茗荷谷駅まではそうであった。
地下鉄丸の内線が池袋からお茶の水までしか運行されていなかった頃から、その地下鉄に乗って小学校に通った。毎年(と思うが)路線は延長され、毎年混み具合がひどくなった。路線がどこまで伸びていたのか分からないが、背広を着た男性ばかりという感じになり、小さい私は四方を高い壁に囲まれで、息苦しかった。
それだけではない。茗荷谷駅(池袋から二つ目)で降りるという単純な行為が、単純ではなくなった。「降りまーす」と声を上げ、大人の間をかき分け、おそらく周りの気の毒な人たちにランドセルをガチガチぶつけながら、突き進む。時には親切な大人が押してくれたり、引っ張り出してくれたりして、やっと降りた。
茗荷谷駅近辺には学校が多い。区立、私立、国立とあり、地下鉄で通う子どもも多かった。で、しばらくの間、子ども専用というやり方が対応策となっていたように思う。では、これは、大人に対する差別になるのであろうか。記憶が曖昧でどれだけの期間、その「サービス」を受けていたのかは憶えていない。
女性専用車両に関しては、私は「いいじゃないの、全車両を朝から晩まで女性専用にしているわけじゃなし、また、『私は男女混合でもいいわ』という女性が専用に乗らなくたって、それも目くじら立てるほどのことじゃないんじゃない?」と思うのだけれど、そういう「安易」な態度は許されないんだろうか。今までも、また今でも、多くの場面で女性が差別されて来たことを考えると、痴漢問題に対する現実的、実際的な対応策として、そのくらい女性に親切にしても構わなくない?
アメリカで、障害者専用の駐車場を巡り、信じられないような事件があった。事件が起きた時、駐車場には空きが二つ。一つは障害者用。もう一つは一般用である。健常者が一般用に駐車しようと車をその方向に移動していたら、障害者のライセンスプレートを付けた車が一足先に一般用に駐車してしまった。
障害者は一般向けに駐車しても法律違反にはならないが、健常者が障害者用に駐車すれば法律違反。罰金を課せられる。上記のケースで一つ残っている駐車スペース(障害者用)には健常者は駐車出来ない。
「あんたが障害者用に停めれば、俺は一般用に停められる。なんて、嫌がらせなんだ」と口論になり、挙句、健常者が銃を取り出して障害者を撃ったのである。(上、左の写真は障害者専用の駐車スペースを示すもの。違反者はレッカー移動され、罰金は最大250ドル((約2万7千円))と書かれている)
「女性専用車両に乗らない女性がいることで、一般車両が混み、座れない男性がいる」(同記事より引用)というネット投稿の発想は、アメリカの事件に似ている。ただ、決定的な違いは、女性専用車両は男性を占め出してはおらず、男性が乗っても罰則はない。さらに、小学生以下、障害者とその介助者もオーケーである。
女性専用車両については、テレビの特集で「『女性専用車両はトラブルが頻発して『”戦場”と化している』と指摘。『専用車両には乗らない』という女性が取材に対し、『化粧の匂』や『スペースの奪い合い』を理由に挙げた…」と毎日の記事は書いている。私はその番組を見ていないので、確かなことは分からないが、なんとなく、「ほら、女性専用車両なんか作るから、問題が起きるんだ」的な態度や「男性の目がないからマナーが悪い」という意見などを伝える姿勢には、それこそが差別のように感じる。
電車内で堂々と、そして長々とお化粧をしている女性を見たことがあるが、私は品のない女性と思った。電車内を自分の私的空間としてやりたい放題の人はいる。そういう人たちが問題を起こしているからと言って、女性専用車両を止める方向に話を進めるのは間違っていると思うがどうだろうか。